2025年6月28日 中川五郎LIVE
6月28日(土)は、陽のあたる道小さな音楽会vol.198「中川五郎LIVE vol.5」でした。
6月とは思えない暑さの中、ご来場いただいた皆さまありがとうございました。『ミサオおばあちゃんの笹もち』からアンコールの『はみだしくん』まで15曲を熱く歌って下さった中川五郎さんありがとうございました。
『ミスター・ボージャングル』や『ミー・アンド・ボビー・マギー』などおなじみの曲に加えて、詩人の詩に(勝手に)曲をつけた歌、風刺をきかせた歌、アパルトヘイトを題材にした歌など、"フォークシンガー"中川五郎の真骨頂を存分に発揮してくれた今回のライブで、一番印象に残った歌は、『フィル・オクス』です。この歌を陽のあたる道のライブで聴くのはたぶん初めてだったと思います。
今年話題になったボブ・ディランを描いた映画「名もなき者」を観て、五郎さんが少し物足りなく感じたのが、ディランと同時期に歌っていたガスリーズチルドレンといわれるフォークシンガーたちがあまり描かれていないことだったそうです。その中の1人であるフィル・オクス(1940-1976)に五郎さんは特に影響を受けていて、ピート・シーガーやジョーン・バエズの歌でよく知られている『ジョー・ヒル』のメロディにのせて『フィル・オクス』という歌を作っています。この日歌われた歌詞は次のとおりです。
♪
昨日の夜ぼくの夢に フィル・オクスが出てきた
そして言うんだ わたしが死んで50年
もう50年になるのに 昔わたしが歌っていたどの歌も
今のアメリカにぴったり 昔よりもっとぴったり 全部今の歌
「アメリカは世界の警察」「多すぎる殉教者」「よその国を踏みにじる白人のミリタリー・ブーツ」「運がなければあなただって」
夢の中でフィル・オクスが ぼくに語りかけた
わたしが死んで50年後の世界はアメリカは
もっとよくなっていると思っていた
世界はもっとやさしく 世界はもっと美しい
世界はもっと豊かになることを願い信じて
わたしはギターを持って歌っていた
だけど昔わたしがうたっていたどの歌も
今のアメリカにぴったり 今の世界にぴったり 全部今の歌
だからわたしは生き返る フィル・オクスがぼくに言った
世界には歌が必要 わたしは新しい歌を作るよ
でもフィル・オクスは夢の中の人
フィル・オクス ぼくは作るよ
フィル・オクス ぼくは歌うよ
今の世界に響く歌 あなたに続く歌
フィル・オクス ぼくは歌うよ
世界はもっとやさしく 世界はもっと美しい
世界はもっと豊かで 世界はもっと素晴らしい
フィル・オクス ぼくは歌うよ
昨日の夜フィル・オクスがぼくの夢に出てきた・・・♪
最後の数行に中川五郎さんの強い決意が込められています。
2021年に平凡社から出された五郎さんの著書「ぼくが歌う場所〜フォーク・ソングを追い求めて50年」にはこう書かれています。
「この『フィル・オクス』という替え歌は、今の時代を今の表現で歌いたいという、そしてこの先もますます歌い続けたいという、ぼくのマニフェストなのだ。」(P280)
ライブの時は必ずワインのボトルを何本か空けていた五郎さんが、最近は、飲んだとしても1杯にとどめ、曲のエンディングでのジャンプも封印したのは、まさにこの「マニフェスト」を実行しているからなんですね。
五郎さん、「今の世界に響く歌」を、これからもずっと歌い続けてください。ありがとうございました。
(写真撮影:山浦昌美さん)
